アンモニア濃度、硫化水素濃度、pHの3点が手軽に測定でき、数値が目で確認出来ますので、より良い環境作りの目安に安価にて御利用頂けます。
測定方法
アンモニア濃度試験紙 (6段階の判定) |
試験部に蒸留水を一滴つけて測定場所にて約30秒間さらし、変色部分を標準色表と比色して濃度の判定を致します。 5ppm以下、10.30.50.100~200.300ppm以上。 |
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硫化水素濃度試験紙 (5段階の判定) |
アンモニアの測定と同じ。 3ppm以下、15.30.60.150ppm以上。 |
糞のpH試験紙 (8段階の判定) |
排泄された直後の糞を少量容器に採り、水を加え液状にして、その中へ試験紙の上部までつけ約2~3秒後に取り出し、中央の試薬部の変色部分と試験紙の標準色と比色して判定を致します。 pH6.2から0.2間隔でpH7.6まで。 |
※定期的な測定が効果を生みます。
アンモニアが家畜に及ぼす影響
家畜の飼育環境下で発生する有害ガスと言えば二酸化炭素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化イオウ、硫化水素、メタン等がありますが、特に問題となるのがアンモニアガスです。アンモニアは無色で刺激性の気体であり、微生物の作用によって排泄物中の窒素画分(蛋白質、核酸、アミノ酸等)から産生されます。
通常、人間がアンモニアを感ずる濃度は25ppm以上であり、耐えられる濃度は50ppm位と言われております。
健康・安全面からは25ppm8時間、または35ppm15分間と決められています。家禽では20ppmという低い濃度でも長時間にわたって暴露するとニューカッスル病及び、気のう炎に対する感受性も増大し、感染症は倍になります。また肺は、暗赤色となり、水腫、充血、出血しやすくなります。50ppmでは増体率・要求率・産卵率低下、50~100ppmではMGの増菌率が非常に高く危険になります。1~7週令の豚を2~6週間100ppmのアンモニアに暴露すると咳、鼻と気管の粘膜上皮の肥厚、肺の充血、出血気腫、水腫が観られる。家畜全体にわたって200ppm以上になれば、粘液増量、充血・出血が多く観られ、角膜が混濁し肺水腫が多くなります。
家畜の生産に悪影響を及ぼさない低濃度のアンモニアでも短期間の暴露により、病原微生物に対する抵抗力が低下し2次感染の危険が高くなりますので、アンモニアは家畜の健康保持とも関連して理解することが大切です。
さらに、アンモニアは腸の中にあっても発生します。腸内細菌による下痢・軟便は、アルカリ性を示すことが多く、その場合アミン類やアンモニアが多く検出されます。これは、窒素の無駄遣いとなって蛋白質の有効利用の面では大きな損失となっており、栄養飼養学の上でも問題として大きく取り上げられています。そして、このような状態が長く続きますと、アミン類(発癌性の高いことで有名なのはニトロソアミン、これも発生します)、アンモニアが腸管より吸収され、門脈を通って肝臓へ移行し、肝機能の負担が大きくなります。アミン、アンモニアは吸収されて肝臓で解毒されますが、その解毒にエネルギーが必要となるため、飼料効率がその分だけ低下することになります。アミンは、下痢の発生と関係し、それがまた発育にも悪い環境を与えるのです。こうした生理的なストレスも畜産経営にとってマイナス効果として見過ごすことは出来ません。アンモニアやアミン以外にも硫化水素やメルカプタン、その他の悪臭は、単なる環境問題だけでなく、家畜の病気、生理的な面にも大きく関係していることを、再確認して下さい。
引用文献
畜産大辞典 内藤元男 監修 養賢堂
養鶏ハンドブック 田先威和夫 他著 養賢堂
鶏病臨床図説 日本畜産振興会
農業技術大系(5) 畜産編・採卵鶏・ブロイラー
腸内フローラと栄養 光岡知足 編 学会出版センター
腸内フローラと発癌 光岡知足 学会出版センター
畜産の研究 第40巻 第3号 P.383 J.S.Carlile著 戸塚耕二訳